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選挙制度とは?若者の投票率から考える“私たちの一票”の意味

「選挙」と聞くと、ニュースで映る候補者の演説や、投票所の映像を思い浮かべる人が多いかもしれません。けれども選挙制度の本質はもっとシンプルです。

この記事では「選挙の基本」から「なぜ若者の投票率が低いのか」、さらに「これからの投票のあり方」まで、身近にわかりやすく解説していきます。

1.そもそも「選挙」ってなんだろう?

選挙という言葉はよく耳にするけれど、「なぜ行われているのか」「どういう意味があるのか」を深く考える機会は意外と少ないものです。

実際のところ、選挙は単なるイベントではなく、私たちの暮らしや社会のルールを形作るための仕組みなのです。ここではまず、「選挙とは何か」を基本から整理してみましょう。

(1)選挙は「みんなで社会を決める仕組み」

選挙を一言でいえば「社会の意思決定に参加するための方法」です。

学校にたとえると、生徒会長をみんなで選ぶようなもの。クラス代表が決まれば学校生活に関わる決定に影響を与えるのと同じで、私たち市民は市議会議員や市長を選ぶことで、自分たちの生活に直結する政策に声を届けることができるのです。

例えば、さいたま市では、社会のルールやインフラ整備、公園整備や子育て支援、地域交通の改善など、日常生活に密接なことが市議会で議論されます。投票を通じて自分の意見を反映させることは、いわば「社会の経営会議」に市民として参加するようなものなのです。

(2)なぜ日本では18歳から投票できるのか

日本の選挙権年齢は、長い間20歳以上でした。しかし2016年の法改正により、世界的な流れに合わせて18歳以上に引き下げられました。これは「若者の意見をもっと政治に反映させたい」という思いからです。

大学進学や就職といった人生の大きな選択に直面する18歳は、社会問題に直接関わる世代です。教育費、就職環境、奨学金制度など、自分に関わる課題が数多くあります。だからこそ「大人としての責任を持って投票してほしい」と考えられたのです。

ちなみに世界を見渡すと、多くの国が18歳を基準にしています。つまり、日本の18歳選挙権は国際標準へのキャッチアップでもありました。

(3)「当選確実」がすぐ出るのはなぜ?選挙速報のカラクリ

選挙の夜、午後8時に投票が締め切られた瞬間に「当選確実」とテレビで流れるのを見て驚いた経験はありませんか?まだ開票も始まっていないのに、なぜ結果がわかるのか。その裏には「出口調査」と統計分析があります。

各メディアは投票所を出た人に「誰に投票しましたか?」と質問し、その回答をもとに得票傾向を推定します。さらに過去の選挙データや地域ごとの支持傾向を加味して「この候補が当選する可能性が極めて高い」と判断するのです。

もちろん僅差の場合は当確を出さず、開票が進んでから発表されます。さいたま市でも市議選や市長選で出口調査が行われ、票読みと組み合わせて発表されます。つまり「当確」は単なる勘ではなく、統計的に裏付けられた科学的予測なのです。

なお、「当選確実」はあくまで予測にすぎないため、まれに、開票が進むにつれて取り消されることもあります。

2.日本の選挙制度をざっくり解説

選挙と一口にいっても、国のリーダーを選ぶものと、地域のリーダーを選ぶものとでは仕組みや意味合いが異なります。

国政選挙はニュースなどで大きく報じられますが、実は地方選挙のほうが私たちの生活に直結しています。また、選挙の方式も「候補者の名前を書く」だけでなく、「政党名を書く」ケースもあります。

ここでは国政選挙と地方選挙の違い、日本独特の仕組み、そして地方選挙がなぜ大事なのかを整理してみましょう。

(1)国政選挙と地方選挙のちがい

国政選挙は国全体の方向性を決めるためのものです。衆議院議員・参議院議員を選び、選ばれた議員は国会で法律を作ったり国家予算を決めたりします。

一方、地方選挙はもっと身近で、市長や県知事、市議や県議などを選ぶものです。例えばさいたま市議会議員選挙では、市の予算配分や教育・医療・福祉・子育て支援、地域のインフラ整備など、市民の暮らしに直結する決定が行われています。

つまり国政選挙は「国の大きな方向性を決める選挙」、地方選挙は「自分たちの生活の細部を形づくる選挙」といえます。

どちらも重要ですが、日常生活への影響度でいえば地方選挙こそ無視できません。

(2)「小選挙区比例代表並立制」ってなに?

衆議院選挙では「小選挙区比例代表並立制」という少し難しい制度が使われています。これは一人ひとりが投票用紙に2回記入する仕組みです。1枚目は「候補者の名前」を書き、地元の代表を選びます。2枚目は「政党名」を書き、国全体での支持を示します。

こうすることで、地元の声も反映しつつ、小党や新しい政党にも議席獲得のチャンスが生まれます。例えば、大政党に強い小選挙区と、幅広い意見をすくい上げる比例代表を組み合わせることで、バランスを取ろうとしているわけです。

地方選挙はこれに比べてシンプルで、「自分の選挙区から誰を選ぶか」だけに集中できます。

(3)地方選挙は身近な政治を決める舞台

さいたま市の市議会選挙では、全市を10区に分け、各区ごとに定数が決められています。例えば、大宮区は定数5、浦和区は定数8といった具合です。有権者は自分の住む区の候補者の中から1人を選び、得票数の多い順に定数分の候補が当選します。

ここで選ばれる市議会議員は、社会のルールやインフラ整備、公園整備や子育て支援、公共交通のあり方など、生活に密着した議題を審議します。つまり「道路の舗装が遅れている」「保育園の数を増やしてほしい」といった市民の声を代弁してくれるのが市議会議員なのです。

身近な課題をどう改善するかを決める場、それが地方議会であり、選挙は、そこに住む住民にとって大切な意思表示の機会といえます。

3.若者の投票率が低いのはなぜ?

選挙のたびに、「若者の選挙離れ」や「若者の投票率の低下」が声高に叫ばれ、なんだか自分が責められているように感じることはありませんか?確かに、政治的な関心が薄い若者もいるでしょう。

しかし実際には、「投票したくでもできない」「そもそも誰に・どこに投票したらいいのか分からない」という状況を作ってしまっている、制度や政治家の側にこそ問題があるのではないでしょうか。

ここでは、若者が投票から遠ざかってしまう主な理由を4つの観点から整理してみます。

(1)引っ越したら投票できない?住所要件の壁

大学進学や就職で引っ越したばかりの人は要注意です。日本の公職選挙法では、住民票を移してから3か月以上経たないと新しい住所地で投票ができないこととなっているからです。

例えば、4月にさいたま市へ引っ越してきた大学新入生が6月に選挙を迎えると、新住所では投票できず、旧住所の自治体でしか投票権がありません。その場合、不在者投票の手続きをしなければなりませんが、これを知らずに「投票できなかった」と諦めてしまう人もいます。

進学や就職で環境が変わるタイミングは投票権を失いやすく、特に若い世代に影響しやすい制度上の壁となっているのです。

(2)不在者投票って意外とめんどう

制度として用意されている不在者投票ですが、実際には使い勝手がよいとは言えません。まず投票用紙を請求し、それを滞在先の選挙管理委員会に送ってもらい、さらにその場で記入して元の自治体に送り返すという手順が必要です。

マイナンバーカードがあれば一部オンライン申請は可能ですが、やはり「わかりにくい」「時間がかかる」と感じる若者が多いのが実情です。

アルバイトや授業に追われる生活の中で「そこまで手間をかけるなら今回はいいや」と思ってしまうのも無理はありません。制度は存在しても、その煩雑さが逆に利用を遠ざけてしまっているのです。

(3)投票所が遠い・時間が合わない

「投票所に行くのが面倒」という理由も若者からよく聞かれます。投票は、基本的に住民票のある地域の指定投票所でしかできません。実家に住んでいれば近くても、下宿や一人暮らしだと「知らない場所に行くのは不安」と感じる人もいます。

また、投票時間は多くの地域で朝7時から夜8時までですが、アルバイトやサークル、仕事があると意外に時間が合いません。期日前投票という便利な制度はありますが、場所や方法を十分に知らない人が多いのが現実です。

結局「行きたくても行けなかった」となり、投票率の低下につながっています

(4)「自分が投票しても変わらない」という意識

最後に大きいのは心理的な壁です。「一票ぐらいで何も変わらない」という考え方は、特に若者に根強くあります。確かに全国規模の選挙では何百万票もの差がつくことがありますが、地方選挙では数十票の差で当落が決まることも珍しくありません

さいたま市の市議選でも、ほんのわずかな票差で結果が変わった事例が実際にあります。つまり一票の重みは想像以上に大きいのです。「誰かに任せる」のではなく「自分の声を反映させる」という意識を持てるかどうかが、投票行動につながる重要なポイントなのです。

4.それでも投票する意味があるのはなぜ?

「投票は面倒だし、自分の一票で何も変わらない」そう思う気持ちは理解できます。でも、投票には確かに意味があります。社会の仕組みや政策は、一人ひとりの投票が積み重なって動いているからです。

ここでは「一票の重み」がどのように私たちの生活に関わるのかを3つの視点でみていきましょう。

(1)あなたの一票がまちの未来を変える

選挙は単なる儀式ではなく、未来の方向性を決める重要な場です。たとえば市議会議員選挙で誰が当選するかによって、市の予算配分が変わります。駅前再開発を優先するのか、保育所の拡充に力を入れるのか、その判断は議会に委ねられます。

そして議員を選ぶのは、他でもない市民です。たとえ1票でも、それが積み重なれば大きな変化を生みます。実際にさいたま市の選挙では数十票差で当落が分かれた事例もありました。つまり「自分の一票で街の景色が変わる」可能性は、決して誇張ではないのです。

(2)投票しないと「誰かに決められてしまう」

もし投票に行かないとどうなるでしょうか。社会のルールや政策は、それでも決まります。ただし、その方向性を決めるのは投票に行った人たちです。つまり棄権は「誰かに任せる」選択と同じです。

たとえばアルバイトのシフトを考えるときに、自分が意見を言わなければ他の人に決められてしまうのと似ています。「自分が行かなくても結果は出る」と考えるのは簡単ですが、それは裏を返せば「自分の将来を他人に委ねる」ことです。

自分の生活に直結する大切なことだからこそ、主体的に関わる意味があるのです。

(3)若者の声が届かないと、政策は高齢者中心になる

日本の選挙では高齢世代の投票率が圧倒的に高く、若者は低迷しています。その結果、政治家は「投票してくれる人」に向けた政策を重視しがちです。高齢者向けの年金や医療に重点が置かれる一方で、教育費の負担軽減や働き方改革、子育て支援など若者向け政策は後回しにされやすいのです。

しかし若者が投票に行けば状況は変わります。「この世代の声を無視できない」と政治家が判断し、若者のニーズに応える政策が増えるのです。つまり投票は単なる権利ではなく、「社会を世代バランスよく動かすための力」でもあります。

5.若者が投票しやすくなるための新しい試み

「投票したいけど、忙しい」「仕組みがわかりにくい」「投票所に行くのが面倒」そんな声を受けて、全国の自治体や選挙管理委員会では投票環境を改善するための新しい取り組みが始まっています。

さいたま市でも若者の投票率を少しでも上げるために、制度の工夫や啓発活動が行われています。ここでは、ネット投票の検討、大学や商業施設での期日前投票、そしてSNSやキャンペーンによる啓発の3つを紹介します。

(1)ネット投票の可能性と課題

「もしスマホで投票できたら便利なのに」と思ったことがある人は多いでしょう。確かに、アルバイトや授業で忙しい若者にとって、自宅やスマホから投票できればハードルはぐっと下がります。

さいたま市でも国の議論を注視しつつ、将来的な導入可能性を考えています。ただし課題は多く、特に「投票の秘密が守られるか」「不正を防げるか」という点が大きな壁です。例えば家族や友人の前で投票を強要される可能性や、システムへの不正アクセスなど、技術と制度の両面で対策が必要になります。

それでも、技術が進めば将来の有力な選択肢になることは間違いなく、「ネット投票が当たり前」になる日を見据えて研究や実証実験が各地で始まっています。

(2)大学や商業施設での期日前投票

「投票所が遠い」「当日忙しくて行けない」という声に応えるのが期日前投票です。さいたま市でも区役所のほかに、大型商業施設や駅近の公共施設など、人が集まりやすい場所で期日前投票を実施しています。これなら買い物や通勤・通学のついでに投票でき、若者にとっても利用しやすくなります。

さらに、もし大学キャンパス内に投票所があれば、授業の合間に立ち寄れるので、学生の投票率は大きく改善する可能性があります。実際、全国の一部自治体では大学や高校に臨時の投票所を設置した事例もあります。

身近な場所に投票所があるだけで心理的ハードルは下がり、「投票に行く」ことが特別な行動ではなく、日常の延長として定着しやすくなるのです。

(3)SNSやキャンペーンで投票を身近に

投票を「面白そう」と思える仕掛けも重要です。さいたま市選管では、地元大学生とコラボした選挙啓発動画を制作したり、SNSで投票日や期日前投票の情報を発信したりしています。若者が普段から利用しているInstagramやX(旧Twitter)、YouTubeを使えば、硬いイメージの選挙もぐっと身近になります。

さらに、投票済証を提示するとお店で割引が受けられる「センキョ割」と呼ばれるキャンペーンも全国的に広がりつつあります。さいたま市内でも飲食店などが参加し、投票を「お得で楽しい体験」と結びつけています。

投票そのものがイベントやキャンペーンと一体化することで、「行ってみようかな」という気持ちを後押ししているのです。

まとめ|「選挙制度」を知ることからはじまる私たちの一票

ここまで、選挙の基本的な仕組みや若者の投票率が低い理由、そして投票をしやすくする新しい取り組みについて見てきました。制度の複雑さや生活の忙しさの中で投票に行きにくい現実は確かにありますが、それでも「自分の一票」が社会に影響を与える可能性は大きいのです。最後に、この記事のポイントを整理しながら、これからの一票の意味を改めて考えてみましょう。

投票は単なる形式的なイベントではなく、「社会の方向をみんなで決める会議」に参加することです。投票に行かないということは、自分の未来を他人に委ねてしまうこと。逆に言えば、一票を投じることで「自分もこの社会の一員として意思表示をした」という実感を得られます。

また、若者が投票に参加することは政策のバランスを保つためにも重要です。高齢世代だけが投票すれば政策もその世代中心になりがちですが、若者の声が加わることで教育、雇用、子育てといったテーマにも光が当たります。さいたま市でも投票環境の改善や啓発活動が進められています。

次の選挙は、未来を形作るためのチャンスです。「選挙制度を知る」ことは第一歩。そして「投票に行く」ことで、自分の生活に直結する政治に参加できます。大げさに聞こえるかもしれませんが、あなたの一票が街を、そして社会を動かす原動力になるのです。

さいたま市議会議員(大宮区)

西山さちよ

【連絡先】

〒330-0854 さいたま市大宮区桜木町3-254-1
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